2012年03月01日

特別選抜における英語資格要件の整備 〜横浜市立大学における試み〜

『大学マネジメント』2012年2月号 Vol.7 No.11 p26-27 に掲載されたエッセイです。

つながる、つなげる、STAFF・SPIRAL!
特別選抜における英語資格要件の整備 〜横浜市立大学における試み〜

横浜市立大学 アドミッション課 専門職(学務准教授)
出光 直樹

◆はじめに

 横浜市立大学は、明治初期に横浜の実業家らが中心となって設立された横浜商法学校や十全医院を源流とし、旧制高等教育機関としての横浜市立横浜商業専門学校や横浜市立医学専門学校・横浜医科大学を母体として、発足しました。

 戦後の新制大学発足の際、市立、国立、そして私立の3つの旧制教育機関がともに「横浜大学」の名称で設置申請を行ったために、当事者による協議がおこなわれました。その結果、3者ともに「横浜大学」の名称は使わず、それぞれ「横浜市立大学」「横浜国立大学」そして「神奈川大学」として出発した、というエピソードが残っています。

 1949年に商学部をもって発足した横浜市立大学は、1952年には旧制度で設置されていた横浜医科大学を統合して医学部と文理学部(その後平成7年に国際文化学部と理学部に改組)を設置しました。現在でも学士課程の学生数4千名程度と比較的小規模ながら、人文、社会、自然、そして医療系の分野を有する総合大学として、教育・研究・臨床のニーズに応えてきました。

◆2005年の法人化と学部改組

 公立大学法人制度が導入されて2年目となる2005年4月、横浜市立大学も公立大学法人としての新たな歩みを始めました。また、国際文化学部、商学部、理学部を統合改組して国際総合科学部(国際教養学系・経営科学系・理学系)を設置。文系から理系までの分野が揃った本来のリベラルアーツ型の学部を設置するとともに、全学必修の英語科目において「TOEFL」を単位認定・進級要件に設定するなど、大胆な改革を実施します。

 ちょうどその年の9月、縁あって筆者は桜美林大学から横浜市立大学に移りました。桜美林大学では、大学院生および職員として10年程の年月を過ごし、職員としては主にアドミッションセンターで入試広報業務に従事していましたが、横浜市立大学でも引き続き取り組んでいます。

◆入学者選抜の状況

 横浜市立大学では、一般選抜での入学者が約75%、特別選抜での入学者が約25%となっています。学部学科毎にみると、医学部医学科は、90名の定員全てを一般選抜のみで募集しています。医学部看護学科は、一般選抜80名、指定校推薦20名。より多様な選抜方式を実施している国際総合科学部では、一般選抜455名、指定校推薦140145名、AO入試50名、海外帰国生・外国人留学生・社会人が各若干名という募集人員(2012年度)となっています。

 なお、2005年度より基本的にこのような方式で実施していますが、このうち医学部看護学科の指定校推薦は2010年度入試から、国際総合科学部の社会人選抜は2012年度入試から、新たに実施されています。

 国際総合科学部に限ってみると、特別選抜での入学者数は約30%であり、私立大学の平均に比べれば少ないものの、それなりの割合を占めています。多くの大学では、こうした特別選抜での入学者の学力不足が問題とされていますが、本学の場合は、入学後の追跡調査の結果を見てみると、概ね一般選抜入学者よりも好成績を修めています。

◆特別選抜における英語資格要件の整備

 それを支える施策の1つとしてご紹介したいのが、これらの特別選抜における出願要件として、英語資格の要件を包括的に整備してきた試みです。
 国際総合科学部の1期生を迎えた2005年度の入試では、海外帰国生と外国人留学生の特別選抜においてのみ、TOEFL-PBT 423以上またはTOEIC 425以上のスコア提出を求めていました(表1)。
 私が着任した後、実質的に実施運営に関わるようになった2007年度入試では、まずAO入試において、TOEFL、TOEIC、または英検の何れかの資格提出(級・スコア不問)を出願要件に加えました。 その後は、志願者の動向をふまえながら徐々に水準を上げるとともに他の選抜区分にも適用を広げ、現在では(表2)の通りとなっています。

表1 2005年度入試
国際教養経営科学理学
指定校推薦提出不要
AO入試提出不要
帰国生TOEFL-PBT 423、TOEIC 425
留学生TOEFL-PBT 423、TOEIC 425


表2 2012年度入試
国際教養経営科学理学
指定校推薦【C】【D】提出不要
AO入試【B】【C】
帰国生【A】【B】
留学生【B】
社会人【A】但しGTEC除く

【A】TOEFL-PBT 500(iBT 61)、TOEIC 600、GTEC for STUDENTS 700、英検準1級
【B】TOEFL-PBT 460(iBT 48)、TOEIC 500、GTEC for STUDENTS 600、英検2級
【C】TOEFL-PBT 417(iBT 35)、TOEIC 400、GTEC for STUDENTS 500、英検準2級
【D】上記資格の何らかの級・スコア

 このように英語資格の要件を包括的に設定していった背景の1つには、全学必修の英語科目において「TOEFL」を単位認定・進級要件に設定した事があります。団体特別受験のTOEFL-ITP(PBTと同等)を学内で定期的に実施し、国際総合科学部の場合は、500のスコアに到達しないと英語科目の単位認定がされずに再履修となり、また2年次までに単位修得しないと3年次に進級できない、という厳しいルールを導入しました。

 このルールの導入に際しては、十分な環境整備が図られたとは言い難い状況で進められたため、当初は留年者が2割を超えるなどの混乱をもたらしましたが、結果的にカリキュラムポリシーにおける明確な1つの柱となり、アドミッションポリシーにもそれを強く反映させる事が出来たと言えます。

◆学力評価インフラの活用に向けて

 しかし、英語のスコアが入学者選抜の決定打という事ではありませんし、入学後においても「TOEFL」が教育目標の全てという訳ではありません。

 ある一定の英語力を有するという前提の上で、指定校推薦では大学と高等学校との信頼関係に基づく推薦を、AO入試では今までの取組みや志望理由をベースとしたプレゼンテーションを、帰国生・留学生・社会人選抜では小論文と面接を課しています。それぞれの基軸の選抜方法と英語の資格要件と組み合わせることにより、評価の視点を補完しているのです。

 英語に関しては、こうした各種試験が開発されて普及しており、評価指標として活用するインフラが整っていますが、それ以外の分野においても、活用しやすい指標があればと思います。例えば、数学に関するスコア型の試験などが開発されて普及することを期待しています。


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posted by N.IDEMITSU at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 高等教育論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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