2017年04月04日

『アメリカン・ロイヤーの誕生: ジョージタウン・ロースクール留学記』

FMICS(高等教育問題研究会)の会報 『BIG EGG』2017年4月号 掲載のエッセイです。


 阿川 尚之 著 中公新書(1986/10)

プロローグ 三人のロイヤー
T ジョージタウン・ロー・スクールへ
U 第一学年秋学期
V 第一学年春学期
W ワシントンの夢、ニューヨークの夢
X お茶の子さいさい
Y 司法試験狂騒曲
エピローグ ロイヤー誕生

 慶應義塾大学総合政策学部の教授や学部長、駐米大使館の公使を歴任した著者は、今でこそ著名な法学者・エッセイストとして、多くの著作を残していますが、本書はその最初となるものです。 1951年生まれの著者は、慶應義塾高等学校(2年生の夏にハワイへ短期留学を経験)から慶應義塾大学法学部政治学科に進学し、そこから留学したワシントンDCのジョージタウン大学(スクール・オブ・フォーリン・サーヴィス)を卒業して、1977年にソニー株式会社に入社。会社の留学制度を利用して、1981年8月から1984年5月までジョージタウン大学のロースクール(3年制JD課程)に学び、同年7月にニューヨーク州の司法試験を受験します。そして受験後も会社の了解を得て米国滞在を延長し、8月から翌1985年3月まで、ニューヨークの法律事務所で働いてから帰国し、毎月会社に提出していた報告書を基にして本書を世に出します。

 その内容は、当時の日米関係のイシューであった通商問題を担当していた会社員として、交渉相手として接するアメリカの弁護士の存在やその有り様への関心から始まって、LSAT受験やエッセイ・推薦状をとりまとめてのアドミッションのプロセス、毎学期のハードな授業内容や死力を尽くしきるような期末試験、多様な教員やクラスメートの生態、夏休みの法律事務所での実習生体験、司法試験の受験から弁護士登録に至るまで、アメリカの弁護士養成の世界が、生き生きと描かれていています。

 30年も前に刊行された本ですが、最近どこかで紹介されていたので気になり手に取ってみたところ、引き込まれるように一気に読み進めてしまいました。新品でも中古でも入手は容易なようですが、おそらく日本語で書かれたアメリカのロースクール体験記(特に外国人留学生向けの1年制LLM課程ではなく、米国の司法試験受験の要件となる3年制JD課程のもの)としては、未だに貴重な文献でしょう。

 職能集団が成立する社会のシステムや養成制度とは何なのか。典型的な資格専門職である弁護士であれ、我々のような大学職員であれ、昨今の我が国で議論されている専門職養成(特に文系)の課題を考える上でも、とても示唆に富んだ一冊と思います。

(出光 直樹)

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ラベル:書評
posted by N.IDEMITSU at 18:04 | TrackBack(0) | FMICS巻頭言 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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